ブータン人の英語 [英語・英国論]
昨晩、NHK・BSで海外のTV局が製作した、南アジアの小国・ブータンのドキュメンタリー番組を見た。ブータンといえば、自国の伝統文化を守るために世俗的な他文化の流入を頑なに拒んできた国として知られ、一歩足を踏み入れると、百年前にタイムスリップしたかのような、のどかな光景が広がる。
そんなブータンの国語はゾンカ語。谷ごとで言葉が異なるとさえ言われるこの国、首都ティンプーのある西部を中心に用いられている言葉をベースに、国語として普及させている。ちょうど、中国が北京語を国語としているのに似ている。
ブータンの若者の間で最近、西洋文化に対する関心が高まっていることを取り上げたこの番組、インタビューに答える彼らはゾンカ語ではなく、みな流暢な英語を話すのに驚いてしまった。外国語コースなどの学生をインタビューに登場させたのでは決してない。みな、ブータンのごく普通の若者である。
実はブータンの学校では国語(ゾンカ語)の授業以外はすべて、ゾンカ語と並ぶもう一つの公用語である英語で行われており、公文書や街中の表記も英語である。一局だけのテレビ放送も同様に英語で行われ、それに加えて数年前からは欧米の番組が衛星放送を通じて一気に数十チャンネルも視聴可能になり、娯楽といえば隣国インドの映画と相場の決まっていたブータン人の生活を一変させた。欧米文化とは無縁のように思えたこの国であるが、意外なところで寛容な一面をのぞかせている。
アジアで英語の通用度の高い国といえば、英国の統治下にあった香港、マレーシア、シンガポール、インド、スリランカ、パキスタン、そしてアメリカの影響の強いフィリピンなどが挙げられるが、巻き舌のインド英語や、注意して聞かないと中国語にしか聞こえないシンガポールのシングリッシュなど、それぞれ独特の強い訛りがある。しかし、ブータン人はアジア随一と言ってもいい、訛りのない、きわめて綺麗な英語を話す。大国の支配下に置かれることなく独自性を保ち続けたこの国が、少なくとも言語の面ではグローバル化の流れに乗ることをいち早く決めたのはまことに興味深い。
いや、そんな大仰なことではなく、言葉の異なる部族間のコミュニケーションを円滑にするため英語を用いているだけなのかもしれない。それは日本語を共通言語とした日本統治時代の台湾と同じ構図であるが、支配者の言語政策ではなく、自ら選択した言語であるという点で台湾のケースとは根本的に異なる。しかし、いずれにせよ、英語をマスターすることでブータン人がグローバル化への対応力をつけているのは間違いないだろう。
こんな話をすると、だから日本も英語で教育を云々、の話に発展してしまいがちだが、ここで突っ込んだ議論をする気はないし、アイデンティティの喪失という観点から、どちらかと言えば僕はむしろ懐疑的な立場である。ここで言いたいのは、自らの伝統的なアイデンティティを大切にすることでは世界屈指と言ってもいいブータンが、自らの言語のみに固執することなく、あえてなぜ二言語政策を採っているのかということで、その真意とそれによる功罪を知りたいと思うのである。


ブータン、以前から行きたいと思っていましたが、交通の不便さと、ブータン国内で一日あたりUS$200を支払わなければならないという制度などがネックで、実際に訪れることは自分にとっては正直、かなり困難。でも、この番組を見てやはりどうしても行きたくなってしまいました。何とか実現させるぞ!
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北京での会議を終え、北京空港からバンコク行きの飛行機に一人飛び乗った。カルカッタ









昔行ったことあるのですが、確かに幼稚園か小学校低学年くらいの子が、日本の中学1年生くらいの教科書で英語の勉強をしていたのが印象的でした。最近は、テレビ放送も普及しているのですね。当時は、テレビの機械はあってもインド映画のビデオを見るようだと聞きました。
by Tomo (2005-11-21 06:51)
すごいですね!ブータンに行かれたとは。いかがでしたか?
ブータン国営のテレビ局はまさに手作り、という感じのこじんまりとしたものでしたが、民族衣装を着たアナウンサーの話す英語はCNNあたりに出しても通用しそうな流暢なもので、そのアンバランスさが面白かったです。
by ちくりん (2005-11-21 23:17)
うわー、すてきな国なんですね。世の中には素晴らしい所が沢山あるなあ。私もヨーロッパからようやく中東に足を伸ばしはじめたのですが、アジアも南アメリカも行きたい国が沢山!世界は広いですね。
英語、みんなが話せると現地に行った時色々話を聞けて面白いのですが、話せない言葉を片言で話せるようになるのもまた醍醐味です。後者のままだと、一生かかってもせかいの全員と話する、なんてことは夢のまた夢になっちゃうんだけど、それでもいーじゃん、って思うのです。
by usagi (2005-11-22 16:54)
「僕はブータンで一番のDJになりたいんだ」
と言っていた若者が印象的でした。
by しょちょう (2005-11-22 17:21)
usagiさん
現地語を一言でも口にすれば、ものすごく喜んでもらえて、そこからお互いの距離が近くなる、なんてことはよくありますよね。外国の人が片言の日本語を話してくれたら、あ、日本に多少なりとも興味を持ってくれているんだな、と嬉しく感じますし。英語はデファクト・スタンダードであるがゆえに、もしかしたらそのような喜びを感じる機会はあまりないのかもしれませんね。
しょちょう
そういえば、成功したら香港の高層マンションに住むことのほかに、親しい友人みんなをブータン旅行に招待するという約束を昔、したような気がします。ブータンがグローバル化の波にもまれてその姿を変えてしまう前に、なんとかそれを実現したいものです。
by ちくりん (2005-11-23 00:38)