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Those were the days. ~あの頃は若かった~ 出会い [リレー記事]

 思えば、僕のこの10年余りは漂泊の日々だったと言えるかもしれない。学生生活、挫折、就職留学転職…いろいろと遠回りはしてきたし、それで損をしている部分もあったように思う。しかし、それぞれの場面において、自分の信念に基づいて行動してきたのは確かだし、その都度少しずつ前進し、さまざまな経験をすることで視野を大きく広げることができた。おそらく、今後も遊牧民のような人生を送るような気がしている。

そんな転機にはいつも、ある人物の存在があり、自分の考えや行動は大きな影響を受け、また僕自身も逆に影響を与えることもしばしばあった。これからもその関係は続くであろうし、きっとまた訪れる転機には人生における何らかのヒントを得るのだろう。

僕のそんな生き方を決定づけるような出会い、すべての原点は11年前の晩冬、知床にあった。

これは、10年来の親友、しょちょうとの不定期のリレー記事です。


1995年、まだ学生だった僕は冬の北海道を一人で旅していた。オホーツク海沿いのとある町にしばらく滞在した後、次にどこへ行こうか思案していた。

「今年の冬は、岩尾別に行けるらしいよ」

宿で泊まり合わせた、旅行者のそんな言葉に少しだけ心が動いた。岩尾別というのは、知床半島の中でもさらに辺鄙な場所にある一軒宿のユースホステルで、このご時勢においても電気すら来ておらず、自家発電に頼っているという、何ともワイルドな秘境の宿である。冬季はそこで生活する人のために岩尾別までは一応除雪されているものの、その先にある肝心の観光地までの道路が通行止めになり、宿も通常は夏前まで営業を休止する。

そんな冬の岩尾別に、限定的ながら行けるのである。実はこの時すでに、別の場所に行こうと心の中でほぼ決めていたのだが、そんな話を聞いて心が一気に岩尾別に傾きかけた。さんざん悩んで、最後はコインの裏表でどちらに行くか決めたように記憶している。もし、コインが逆の側だったら、今頃僕はどんな人生を歩んでいたのだろうか…

知床半島の付け根にある斜里という町から、知床観光の拠点、ウトロまでバスで向かう。知床半島を走るこの斜里バスという会社は、かなりのスピード狂のバスとして一部の旅行者の間で有名で、スピードオーバーしない限り時刻表通りの時間に着かないようになっているとか、自動車をパッシングしながら猛スピードで抜き去ったとか、速度オーバーで違反切符を切られた、などなど、まことしやかに囁かれていた。

夏場ならば観光客で賑わうのだろうが、バスには地元の人が数名のほかは、僕以外に旅行者らしき姿は一人旅の男性と、女性の二人連れだけ。冬の知床にわざわざ来た彼らでもじゅうぶんすごいのに、雪に閉ざされた岩尾別に向かう自分は相当な物好きである。

バスは雪道ということもあってスピードは幾分抑え目ではあったが、しかし終点ウトロには10分近く早着。さすが斜里バス、根性の座り方が違う。ここからは迎えに来た宿の車で向かうことになるのだが、先ほどのバスで乗り合わせた3人も一緒だった。物好きは他にもいたのだ。

冬の岩尾別は2泊3日のコースが基本で、これから丸2日、この4人で行動をともにすることになる。宿に到着し、僕ともう一人の男性が部屋に案内される。ユースホステルなので相部屋だ。

部屋に入ると先客のものと思われる荷物や洗濯物などが散らかされた状態で置かれ、あまりの乱雑ぶりに何週間も続くスキー合宿の部屋に間違えて通されたのかと一瞬、思うほどだった。それにしても前日からの宿泊客にしては生活感が漂い過ぎている。一体、どういう人が泊まっているんだ…一晩ながら同じ部屋、うまくやっているのか、僕ともう一人の男性は言いようのない不安に襲われた。

そうこうしているうちに、荷物の主が部屋に入ってきた。背の高い学生風の青年、年齢は僕と同じか少し上くらいだろうか。そしてもう一人はまだ顔にあどけなさを残す少年。

「こんにちは、今日からここに泊まります」と挨拶すると、

『あ、どーも』
二人はそんな感じで言葉を返してきた。

まだ不安感が拭えないこちらを尻目に二人は内輪での会話を始めた。
「それダメだって」
「だって○○さんだって~したじゃーん」

昨日初めてここで会ったにしては随分親しげだし、少年のほうも青年に向かってタメ口をきいている。一体どんな関係なんだ。

「あのー、お二人はご一緒に旅行されてるんですか?ここには昨日から?」
そう尋ねると、

『いや、別々ですよ。ここには数日前から』

掛け合い漫才みたいなこの二人、以前からの知り合いじゃなかったんだ。それにしても、2泊3日のコースなのに、なんで何日も泊まってるの?

疑問が氷解せぬまま、夕食を済ませ、夜は宿のスタッフと宿泊者全員でティータイム。僕を含む、今日到着した4人は明日行うクロスカントリースキーツアーなどの説明を受けている間、先ほどの同室の二人をはじめ、前からの宿泊者は何やら盛り上がっている。ずいぶん結束固いなぁ。

そしてスタッフが彼らに
「君たち明日どうするの?」

『うーん、明日も泊まっちゃおうか』
『そうしよう、そうしよう』

そしてそのスタッフが、
「じゃ、明日は今日来た人と一緒ね」

え、チェックアウトして帰るんじゃないの?この濃い人たちと一緒?なんかすでに内輪で固まっちゃってて、仲間外れにされそう。

そして翌日、運命の歯車がカチッと噛み合う音を聞くことになるのだった…

続く


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コメント 2

水無月

素敵な出会いの場が、私の住む北海道、しかもオホーツク海沿岸ということで感慨深いです。
by 水無月 (2006-03-04 20:21) 

ちくりん

水無月さん
道東へは最近すっかり足が遠のいてはいますが、いろいろな思い出があった、僕にとっては忘れられない場所です。
by ちくりん (2006-03-05 03:09) 

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